君と私の道中劇

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 戦争の発端とは半分は後世の者がくだらないと思うことで、もう半分は当時の者達ですらそう思うことだと言われている。  いきり立ってファティマ領にやって来たゼノビア軍、それを迎え撃ったのは正規軍。 「あたしとフリオで騎士団も正規軍も総動員して迎撃に出たわ。その時ね、街から大勢の民衆がついてきたの、ラティーナ姫とシドを渡すものかって。ファティマの黒歴史よ」  肩を竦めて史書に無い物凄い裏話を披露した。以後ずっとシドニスは民衆の側に立つ人物として志が継がれてきた。  マジョリティーとでもいうのだろうか、市民の声を反映することにかけては隋一なのだ。 「それでシドニス国家将軍とラティーナ王女が結婚されたんですね」  恋愛結婚の末のことだ。それ以前にクーデター騒ぎがあった時、既に姫もシドニスに惚れていた、というのは胸にしまったままにしておくことにしたようだ。 「そ。あのまま衝突してたらきっと負けてたけどね。でも解っていても戦ったわ」  あまりに懐かしい記憶に触れる。回答する権利は無かったが、デュラハンに発言権が無いわけでは無い。
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