君と私の道中劇

13/30
前へ
/170ページ
次へ
「そのような大事な品を手放しても良いのですか?」  はいあげる、で済むような物ではない。国家秘蔵の宝物と同等の価値がある。 「良いのよ、槍の名手に使われた方がきっと彼も喜ぶから。お願いがあるの、槍で舞いを見せて欲しいの」  アレックスが馬を停める。 「皆さん申し訳ありません、少々時間を下さい」  律儀にそう言うとヴィボルグを手にして距離を取る。  目を瞑り心を落ち着けると即興の舞いを見せた。武技の達人のそれは、全く違う者なのにどこか似たような感覚をフラに与える。 「アズ……」 「よしっ、アレク!」  剣を持ってアンジェリナもそれに加わった。剣聖と槍聖、何の打ち合わせもしていないというのにぴったりと息が合っている。  遠い昔に一度だけ見た、団長アズライールと副長エリシャの舞いを思い出してしまう。  統一戦争、それよりももっと前にあった彼女の青春時代。 「アンジー!」  装備を呼び出すとフラがアンジェリナに赤い剣を放る。それを見事受け取ると大胆に踊った。 「神装具グラムルージュ、あなたにあげるわ剣聖」
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

118人が本棚に入れています
本棚に追加