君と私の道中劇

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 サンライズではフリーパス、グルガンでは一度も街に出たことなどないので気にすることもなかった。  だからとここで守護竜であるのを明かしては元の木阿弥だ。 「ワタクシも外でお待ちしています」 「んー、大丈夫大丈夫ちょと待ってね」  近くの腰かけられそうな岩の上で何かを書いて、ペタンと判を捺している。  何をしているのか「んじゃ行こっか」手を引いて検問に並ぶ。 「次」  管理官が身分証の提示を求める。フラが二通を差し出した。  手にした紙を見る、もう一度食い入るように見る。 「ど、どうぞお通り下さい!」  両手で恭しく身分証を返すと、過ぎ去るまで頭を下げて見送っているではないか。 「何をしたんですの?」 「あー身分証作ったのよ。ちょちょいってね」  ちょちょいで偽造するとはとんだ奴だ。ヘンリエッタが紙を片手に書いてあることを読む。 「エッタ・フレイム。フレイム王国王女。右記の者をフレイム王国終身最高顧問が認める……ですの?」  紫の印鑑が捺されていて、微妙に乾ききっていない。  王女を僭称するとはやることが大胆を通り越している。
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