君と私の道中劇

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◇  フレスゲン内にある屋敷、そこへ突如訪問者があると告げられた主人が女家令の話に耳を傾けた。  来訪者はハーファ傭兵団。全く聞き覚えがない。きっと戦争が起きたので売り込みに来たのだろうと考え、面会を却下しようとした。 「ご主人様、それがこの信書を渡してほしいと言われまして」  どんな耳障りの良い宣伝が書かれているのかと、半ば冷然として封書を開ける。  中にある便箋、どこにでも売られているような味も素っ気もないものだ。  読まずに捨てようかとすら思った、たった一枚なので折りたたまれていたそれを開く。  そこには短く一行だけ会って話がしたい、それだけが書かれていた。  主人の様子がおかしくなったのは、その下に捺されている印鑑だ。 「この信書の持参者の詳細を」 「はい、青年騎士の男性、青年騎士の女性、気品溢れる年若い女性、それに少女です。皆緑の外套に身を包んでおりました」  総勢四人、封書自体は少女が持っていたと説明する。 「客間へお通しするんだ。それと屋敷に上級騎士団員を即時招集させよ」
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