君と私の道中劇

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◇  綺麗な客間には複数人がかなり同時に着席出来るだけの数の椅子がある机が置かれていた。  調度品もセンスの良さが伺える、きっとスマートな人物が主なのだろう。  三人は椅子に座って屋敷の主人が来るのを待っているが、フラだけはうろちょろと歩き回っていた。 「通して貰えるものなんだね」  傭兵団の名前しか出していないのにと不思議がる。  ヘンリエッタはきっとあの印鑑を使ったのだろうと考えていたが、特に何も喋りはしなかった。 「私も訪問者があれば断りはしませんよ」 「そうだね、アレクもいつも陳情とか受けてたもんね」  ヘロヴェルタ家に請願をしてくる人間は珍しくなかった。  無論、信者であったり知り合いでたったりは多い、けれども中には見ず知らずの人物も混ざっていた。  それらも全て会って話を聞いてから判断を下していた。  門前払いをしたことは一度もない、きっとこれからもそうだろう。 「フラさん、さっきからなにしてるの?」  窓から外を眺めている、これといって何が見えるわけでも無いのに。
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