君と私の道中劇

25/30
前へ
/170ページ
次へ
 盛り上がる胸筋、蓄えられた立派な髭、頑固そうな瞳、伸びた背筋。  軍人として生きてきたであろう見本の男。四十歳前後だろうか、しかし気迫は物凄い。  二人の聖堂騎士は右手を胸にあて会釈した。ヘンリエッタは両手を腹の下あたりで合わせ深くお辞儀をする。 「ハローお髭さん」  フラは軽く右手を振ってあまりにザクッとした挨拶をした。  それが許される年齢に見えているのが最大の特徴だ。本人が良いと思っているかは別として。 「ふむ……その槍は」  来訪の内容などよりも、武人として早速気になってしまったらしい。  アレックスが失礼がないように、穂先に被せていた布を解く。 「ヴィボルグです。初めてお目にかかります、火竜将軍。私は聖マリーベル聖堂騎士長ヘロヴェルタと申します」 「ヴィボルグ! なんと槍聖か! すると」  ルーニー将軍の視線がアンジェリナに流れた。彼女も自己紹介をする。 「同じく聖堂騎士オニールです」  剣聖と槍聖を連れている人物、噂では二人はグルガンの死竜と共に居るはずだ。 「初めまして、ワタクシはハーファ傭兵団長のエッタ・フレイムですわ」 「エッタ・フレイム殿?」
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

118人が本棚に入れています
本棚に追加