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◇
「意識を集中するから、暫く一人にさせといてねー」
ザックリとした一言。フラがメルセドア要塞の一室に籠ってしまった。
ルーニー団長署名の証書を提示すると、意外とあっさりと立ち入りを許可された。
困ったのは三人だ、どのくらい時間が掛かるのか、何をしていたら良いのか全く不明。
「どーしよっか」
一応案内との名目で二人の騎士がついている。一人は中年、きっとそれなりの立場にある人物とわかる。
もう一人はまるで従者のような若い騎士で、事実少し前まではそうだったのだろう。
「殿下は何かございますか」
立場があるので未だにそう呼んでいる。またヘンリエッタもアレックスもやけに丁寧なので雰囲気があった。
「ワタクシはあちらの山が気になりますの」
東にある山脈を見上げる。ここメルセドア砦は山間の隘路が交差する場所に設置されている。
尾根の交差場所、すぐ近くには河があるのは地形上当然だ。
そんなこともあり、大雨に備えて砦は塔のような建物が多く、上が吊り橋で繋がっている。
物資の保管庫や生活空間も上階に集められていた。
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