竜と精霊の郷

3/18
118人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
「中央神山の西部、竜の聖域。その姿を見たものは居ませんが、かつて中央の山の頂きには神竜と呼ばれる美しい主が存在していたそうです」  年嵩の騎士が柔らかに語りだした。こうやって伝説は語り継がれて行くのだろう。 「もう少しお話を聞かせて頂けますか?」 「はい、殿下。ここローズランド大陸には守護竜が存在しておりました。もう七百年も前の話です」  統一戦争。五つの国が争った大戦争、守護竜はその人間同士の戦いに巻き込まれた。 「守護竜は十五の場所をそれぞれ居場所に定め、侵略に対抗しました。力尽き場の主が変わろうとも、甦り常にその場を守り続ける存在として」  攻める側もいつかは共に守護したことがある、そんな者はざらにいた。  街を、森を、湖を、守護竜はただ宿命に従い続けていた。 「全ての守護竜が力尽きた時、神竜が住まう中央山地の頂への道が開かれるとの言い伝えであります」  今はその守護竜が存在していない。しかし中央山地に足を踏み入れて戻った者は誰も居ない。  とても神聖な場所だと締め括られた。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!