竜と精霊の郷

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◇  夜になってもフラが部屋から出てこない為、宿舎寝室が充てられた。  アレックスは他の騎士と同じ部屋に、ヘンリエッタとアンジェリナには現地司令の部屋が明け渡された。  人々が寝静まり、欠けた月が夜空にある。  静かに部屋を出ると、ヘンリエッタは東にある山を見詰めた。 「ヘンリエッタさん、気になるの?」 「起こしてしまいましたか?」  後ろからやって来たアンジェリナに申し訳なさそうに言う。 「半分寝て半分覚醒してるようなものだから、警戒修練ってやつよ」  事も無げに応じて暗い夜空の先を見る。 「竜の聖域。知りませんでしたわ」  もしかしたら同族が居るかも知れない。  ヘンリエッタにとって興味が強いのもうなずける。 「折角だから行ってみたら」 「宜しいんですの?」  別に許す許さないの問題は一切ない。王女が不在になれば騒ぎにはなるだろうが。 「だってそんな行きたそうにしてるんだもん。好きなようにしたらいいのよ、あたしは構わないわ」  何かに襲われる心配も皆無だから。笑いながら一人、部屋へ戻っていった。
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