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「先生」
かけられた声に振り返ると、おさげの女生徒が立っていた。
「どうしましたか?」
「その、質問、いいですか?」
俯きがちに、少し赤い顔でそう云う彼女が可愛くて、思わずくすりと小さく笑いを漏らし、照れを隠すために顔の上の黒縁眼鏡を人差し指で押し上げた。
「ええ、いいですよ」
僕は持っていた本をぱたんと閉じると、向かっていた書棚に戻した。
大学卒業と同時に、この女子校に英語教師として勤め始めて三年。
着任時から耳にたこができるほど、生徒と問題を起こすなと云われてきた。
実際、学生の時分から生徒と結婚した教師の話など聞いたことがあったが、理解できないと思っていた。
――けれど。
最近、僕はひとりの女生徒に恋をしてしまった。
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