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小桜さんがちょこちょこと僕の元を訪れるようになった。
初めは友達と一緒に。
そのうち、ひとりで。
やってきては授業の質問をいくつかする。
「……で。
ここは現在進行形になります。
わかりましたか?」
「あ、はい。
わかり、ました。
ありがとう、ござい、ます」
レンズ越しに目が合うと、小桜さんは頬をその名前の通りに桜色に染めて視線をさっと逸らした。
……毎回、そう。
目が合う度に逸らされる。
「……そう、いえ、ば。
先生の、誕生日って、……いつ、です、か?」
教科書とノートを片づけると、いつも以上に片言で小桜さんが意外なことを聞いてきた。
いままでプライベートなことを聞かれたことは一度もない。
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