第7章  六本のバラ(続き)

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「すごい。あんなに大きな蟹だったから、絶対に食べきれないと思ったけど、 食べちゃったわね」 「蟹は、胃袋の大きさや年齢に関係ないものなのさ」 テーブルの上の片付けを手伝ってくれながら、 ちょっと物知り顔になった彼が、胸を張る。 それから、このご馳走のおかげですっかり満足とリラックスをした私たちは、 その雰囲気に乗って後片付けをし終え、 もう一度ダイニングに戻って、残りの白ワインをゆっくりと味わおうと 意見が一致した。 二人でやる後片付けは、あっという間に終えられた。 そして、ダイニングへと戻った私たちは、 レストランとは違って他の目も音もないせいか、 この晩は、特に心地よいワインの酔いに任せて饒舌になる。 我が家のダイニングに、久しぶりに楽しい会話と笑い声が満ちていた。 そして、そんな私たちとは無関係だとばかりに、 滝嶋は、ダイニングの隅に置かれた彼女のベッドの中で熟睡をしている。
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