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そんなある日、平日の昼間だというのに、突然、田村が電話をかけてきた。
「今度の週末さ、そっちに行ってもいい?」
ドキッと鳴った鼓動と一緒に、なぜか訳しかけの原書本がパタリと
デスクに落ちる。
それに小さく動揺して、私は、首を絞められたアヒルのような声を出した。
「えっ……?」
タイミングが悪い。
このところの胸のモヤモヤやら、進行形で訳している小説やらが重なり、
チクチク燻る私の不安に、こんなにもストレートに突っ込んでくるなんて。
思わず私の心臓はギュッと縮まって、一瞬、動きを止めた気がする。
しかし、短く私が言葉を詰まらせた途端、彼の声がちょっぴり沈んだ。
「あっ、なんか都合悪い?」
私は、慌ててかぶりを振った。
「ああ、うぅん。そうじゃなくて……。
っていうか、都合は全く悪くないんだけど……」
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