第7章  六本のバラ(続き)

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そんなある日、平日の昼間だというのに、突然、田村が電話をかけてきた。 「今度の週末さ、そっちに行ってもいい?」 ドキッと鳴った鼓動と一緒に、なぜか訳しかけの原書本がパタリと デスクに落ちる。 それに小さく動揺して、私は、首を絞められたアヒルのような声を出した。 「えっ……?」 タイミングが悪い。 このところの胸のモヤモヤやら、進行形で訳している小説やらが重なり、 チクチク燻る私の不安に、こんなにもストレートに突っ込んでくるなんて。 思わず私の心臓はギュッと縮まって、一瞬、動きを止めた気がする。 しかし、短く私が言葉を詰まらせた途端、彼の声がちょっぴり沈んだ。 「あっ、なんか都合悪い?」 私は、慌ててかぶりを振った。 「ああ、うぅん。そうじゃなくて……。 っていうか、都合は全く悪くないんだけど……」
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