第7章  六本のバラ(続き)

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その週末。約束通り、彼はカニと共に昼過ぎに我が家に現れた。 だが、いつもの様にバイクではなく、タクシーから降りて来る。 そして、彼のもう一つの手にはバラの花。 この日は、色とりどりのバラが六本。 そして、それを私に差し出した彼は、 「色だけで追いかけるとさ、すぐに、ネタが尽きちゃうから。 今日は、バラそのものの花言葉にしてみました」 しかし、「えっとぉ……」と腕の中で香る花に視線を落とした私の頭には、 「愛」という言葉しか浮かばず、思わず頬が火照ってくる。 そんな私の様子を楽しむように、彼はポツンと言った。 「あなたの全ては可愛らしい」
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