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「大人の色気ねぇ。口元にある小さなエロぼくろのせいでしょ」
そう言ってお姉ちゃんは、自分の口元を指差す。
「杏那、今日やたら俺に攻撃的じゃない?」
「そう?気のせいじゃない?」
お姉ちゃんがお茶碗としゃもじを持ちながら、小さく首を傾ける。
ただそれだけの仕草が可愛くて、我姉ながらじっと見つめてしまった。
それからしばらくして、結兄は隣の自分の家に帰っていく。
「じゃあな、陽菜。ちゃんと勉強しろよ?」
「うん、わかった」
手を振って結兄を見送る。
パタンと閉まる玄関のドア。
私とは違って、別れる寂しさの余韻もなく結兄の姿はドアの向こうへと消えていった。
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