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そう。
ずっと小さな頃から結兄だけを見てきた。
何度想いを伝えたって信じてもらえていないのなら、スタートラインにすら立てていないのと同じ。
それなら、諦めるっていう選択肢だってない。
「まぁ、陽菜らしいけどね」
今更他の人なんて考えられないし、考えたくもない。
私だってまだまだ成長するんだから、可能性がないなんて信じたくない。
そんなことを話しながら歩いていると、後ろから誰かに背中を軽く叩かれる。
「……朝っぱらから声でけぇな」
片手を制服のズボンに突っ込んだまま、横目で私達を見るのは、幼馴染で腐れ縁の寺坂蒼真(てらさか そうま)。
「ちょっと、盗み聞きしないでよ」
「勝手に聞こえてきたんだよ。つーか、陽菜が話すことなんて結兄のこと以外ないだろ」
莉子とは違って、明らかに呆れた顔で私を見る。
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