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小さい頃、私と蒼真はよく結兄に遊んでもらっていた。
二人が公園でキャッチボールをしている姿を、ベンチに座って眺める私。
野球部だった結兄の試合を見に行ったのがきっかけで、蒼真は少年野球チームに入り、今も野球部で頑張っている。
蒼真にとって結兄は多分、憧れの存在。
「まだ諦めてねーの?全然相手にされてないくせに」
蒼真も莉子と一緒で、私が結兄のことを好きなことは知っている。
いつもこうやって何かにつけては嫌味を言ってくるのにも、もう慣れた。
「うるさいな。蒼真には関係ないでしょ!」
舌をベーっと出して、ふいっと顔を背ける。
隣を歩く莉子は、その様子にクスっと笑みを零した。
「……関係あるだろ。どれだけ一緒にいると思ってんだよ」
「ただの腐れ縁でしょ」
「……あっそ。ま、せいぜい頑張れば?」
「言われなくても!」
ズンズンと一人足早に歩いて行く。
ほんっとに蒼真はムカつくことしか言わない。
昔はもっと素直で、優しかったはずなのに。
素直も優しさもきっと、どこかゴミ箱にでも捨ててきたんだ。
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