1.恋愛対象外を脱出する方法。

14/37

181人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
小さい頃、私と蒼真はよく結兄に遊んでもらっていた。 二人が公園でキャッチボールをしている姿を、ベンチに座って眺める私。 野球部だった結兄の試合を見に行ったのがきっかけで、蒼真は少年野球チームに入り、今も野球部で頑張っている。 蒼真にとって結兄は多分、憧れの存在。 「まだ諦めてねーの?全然相手にされてないくせに」 蒼真も莉子と一緒で、私が結兄のことを好きなことは知っている。 いつもこうやって何かにつけては嫌味を言ってくるのにも、もう慣れた。 「うるさいな。蒼真には関係ないでしょ!」 舌をベーっと出して、ふいっと顔を背ける。 隣を歩く莉子は、その様子にクスっと笑みを零した。 「……関係あるだろ。どれだけ一緒にいると思ってんだよ」 「ただの腐れ縁でしょ」 「……あっそ。ま、せいぜい頑張れば?」 「言われなくても!」 ズンズンと一人足早に歩いて行く。 ほんっとに蒼真はムカつくことしか言わない。 昔はもっと素直で、優しかったはずなのに。 素直も優しさもきっと、どこかゴミ箱にでも捨ててきたんだ。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

181人が本棚に入れています
本棚に追加