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「……蒼真もバカだね」
「うるせーよ」
「陽菜には、もっとわかりやすく言わないと伝わらないよ」
………そんなこと、痛いくらいわかってる。
けど、今更どうすることもできない。
「わかりやすく、ね。……言ったところで信じるとも思えないけど」
「まぁね。……気持ち悪い、熱でもあるんじゃないの?って言われておしまいだね」
「………」
俺達の存在を忘れているのか、一人先を歩く陽菜の背中を見つめる。
小さい頃から俺なんか眼中になくて、結兄しか目に映っていない。
「ま、後悔しないように頑張れば?」
そう言って、莉子が陽菜の後ろを追いかけていく。
肩を叩かれるまで、莉子がいなかったことに気付いてなかったらしい。
………ほんと、アホっつーか抜けてるっつーか、目が離せない。
だから、
俺達がこんな会話をしていたことにも、
俺の気持ちにも、
鈍い陽菜は全く気付いていない。
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