181人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
そんな中、今度はお姉ちゃんが帰宅してリビングへと足を踏み入れる。
「………なにやってんの?」
部屋の隅に丸くなって泣いてる妹と、
それを慰めようと必死になっている兄。
そりゃ異様な光景に見えるだろう。
リビングの机の上に広がっているテストの答案用紙と成績表に気付くと、それを無言で手にする。
「……杏那、頼むからキツいこと言うなよ?陽菜は、すっげぇ頑張ったんだから」
そんなお兄ちゃんの言葉なんか聞いてもいないのか、スパっと厳しい一言を放つ。
「陽菜はツメが甘いのよ。苦手な教科ばかりに集中しすぎて、得意科目だからって油断した結果ね」
私はじっとお姉ちゃんの言葉に耳を傾ける。
お兄ちゃんだけが、その様子をあたふたしながら見守っていた。
「三点足りないんだから、結兄との約束もナシね」
「……わかってる」
私はぐいっと目元を腕で拭うと、立ち上がってテストの答案用紙を手に取る。
「間違ったところ、直してくる」
そう言ってリビングを出ると、自分の部屋へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!