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それからしばらく、一人で答案用紙と向きあっていると、部屋のドアをノックする音がした。
「はい」
「陽菜、俺。開けていい?」
私がいいと言う前にドアを少し開けて、結兄が顔を覗かせる。
結兄の顔を見た途端に目頭が熱くなるのを感じて、すぐに机に向き直った。
「ご飯出来たって」
「……後で食べるって言っといて」
パタンと部屋のドアが閉まると、隣に人の気配を感じた。
「……そこ、一個抜けてる」
指摘された場所を目で追うと、“全て選びなさい”という問いに対して、一つだけ抜け落ちていた。
「………一教科、ダメだったんだって?」
「………うん」
またあふれそうになった涙を必死に耐える。
こんな顔、結兄には見られたくない。
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