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特に驚いた様子もなく話す莉子に、私もさっきの言葉を思い出す。
「そうだよ!なんで蒼真も一緒なわけ?」
「悪いかよ」
「ヘンな虫がつかないように見張ってないと心配だもんね」
莉子の言葉に蒼真がギョっとした顔を向ける。
「虫?」
「いや、こっちの話」
蒼真の冷たい視線が莉子を見るけど、全く気にせずに前を向いている。
「……結兄がいた場所で野球やりたいだけだよ」
どこか気まずそうにする蒼真に、莉子がまたクスっと笑みを零す。
「それに、結兄と一緒のチームだった人が臨時コーチしてるらしいし」
結兄が高校球児だった頃、甲子園出場はあと一歩のところで叶わなかったものの、県ではベスト四に入るくらい強かったらしい。
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