2.一歩、大人に近付くには?

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私の質問に結兄は少し困ったような顔で笑うと、両手をデニムジャケットのポケットに突っ込んで宙を見上げる。 「何が違うって…………ん~そうだな。陽菜が思ってるよりも、全然いい人じゃないかな」 「……?騙したりするってこと?」 「ハハ、騙したりはしないけど……そうだなぁー、嘘くらいは吐くかもね。思ってもないことも平気で言えるし、逆に本音を隠したりもする。大人になれば、自分の気持ちに正直になることが難しい時もあるんだよ」 そう言った結兄が、ほんの一瞬寂しげに微笑んだような気がして、私は思わずその先へ踏み込んでしまった。 「………結兄って……今までに彼女いたこと、あるの?」 すると、ちょっとだけ目を丸くした結兄は苦笑しながら、私が聞きたくなかった言葉を口にする。 「そりゃあるよ。俺、何歳だと思ってるの」
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