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薄暗い通路を少しずつ進む私の耳に、嫌でも聴こえてしまう後ろの話し声。
「ね、隣の子って彼女かな?」
「まさか!妹とかじゃないの?」
「えー?妹と2人でこんなとこ来る?」
「だって彼女にしては幼くない?」
その言葉は、容赦なく私の心を抉る。
……………そんなの、わかってる。
周りから見れば、兄妹にしか見えないことも、
結兄の隣が不釣り合いなことも。
それでも、私なりに精一杯大人っぽく見えるようにしてきたつもりなんだけどな……。
何だか急に惨めに思えてきて、堪らずギュっと鞄の持ち手を握りしめると、
「陽菜、どうかした?気分でも悪い?」
様子が変なことに気付いた結兄が、覗き込むように私の表情を伺う。
慌てて首を左右に振れば、結兄は優しくポン、と頭に触れた。
「ならいいけど。周りのことなんて気にすんな。せっかくのデート、楽しまなきゃ損だぞ?」
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