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「陽菜は、今まで結兄に彼女なんか一人もいないとでも思ってたわけ?」
呆れたような蒼真の声が、静かに私の耳に届く。
「……そんなわけ、」
「じゃあ、何にそんなヘコんでんの?」
………何にって……。
「……そんなの誰だって大好きな人の元カノを前にしたら、ヘコむに決まってんじゃん!……しかもっ、あんな綺麗で大人っぽくて…」
早口で捲くし立てれば、それを面倒くさそうに蒼真が遮る。
「別にヨリ戻すわけじゃねーんだし、昔のことをあれこれ考えたって時間の無駄だろ。綺麗なのは事実なんだし、結兄の好きなタイプがわかってよかったんじゃねーの?」
まるで傷口に塩を塗るような冷たい言葉が、私の心にグサリと刺さる。
「………もういい」
別に慰めてほしいわけじゃないけど、こういう時くらい、優しい言葉ひとつ掛けてくれたっていいのに……。
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