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蒼真の横をすり抜け、ベンチに向かって歩き出す私の背に、少し苛立ったような声が投げつけられる。
「余計なことばっか、考えてんじゃねーよ」
立ち止まって後ろを振り返れば、心底不機嫌な顔の蒼真と声と目が合う。
「大体、陽菜が落ち込むとか気持ちわりーんだよ。元気だけが取り柄なんだから、辛気臭い顔してんな」
「っ、そんな言い方…!」
いつもなら言い返せるはずなのに、さすがに今日はそんな元気もない。
「陽菜」
次はどんな嫌味が飛んでくるのかと思えば、蒼真のこの言葉が私の心にストンと落ちた。
「今、結兄に彼女はいない。その事実だけで充分だろ」
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