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6
翌日、早朝。
荒涼とした平原を二つの長い影がのびていた。
本日の業務が開始されるまで、まだ時間があった。
「わたしはあなたをずっと探していた。あなた方に救われなければ、今のわたしはなかった。ミス火星になれば、莫大な富が手に入る。」
ミルクティはナンカンに話しかけた。
「あんたがここに来るまで、そんな大昔の出来事は忘れていた。おれを探すために、財産を潰してまで、宇宙を放浪してたのか。で、どうするね?」
「昨日の夜、あなたの保釈要請をした。」
「保釈要請だって? あんた、とんでもない大馬鹿だな。」
ナンカンは乾いた笑い声をもらした。
「わたしは、あなたといっしょに帰りたい。真剣よ。」
「ムリだよ。かりに保釈許可が降りても、この星からの離脱は不可能だから。それより、まわりに気をつけろ。女を食らう魔物がいるかもしれないから。」
「平気よ。撃退用の小型携帯銃は持ってるから。本人のDNAでしか発砲できないから、人に取られても使えないわ。」
「あいかわらず、何もわかってないな。これだから、お嬢様は困る。おれたちは、<針の穴の谷>って言ってるがね。こいつにはまったら、まず助からない。」
目を凝らせばその存在に気がついて危険を回避できる。
「生物ではないの?」
「自然の魔物だよ。今までの犠牲者がたまたま女性が3人連続したから、女を食らう魔物になった。」
「注意するわ。」
と、言っている矢先だった。
ミルクティは足首を誰かに掴まれたのかと思った。
砂状になった岩石が、つむじ風のように舞って、ミルクティの下半身にまとわりだしたのだ。鉄を含有した砂塵が、ぴったりと吸いつくように、彼女の防護スーツを襲った。
地面に針で刺したような細かい穴が無数に散開した。彼女の真下が突然、ぱっくりと口を開けた。
まさに大地の魔物だった。ミルクティは体ごと、亀裂に沈んでいった。
ミルクティは、亀裂の縁の指を掛けて、這い上がろうとした。
地底の底から得体の知れぬパワーに翻弄され、ずるずると下方へ牽引されていく。
防護スーツと岩石がこすれて、摩擦熱が高くなった。
惑星チョウカイⅡの土壌には発火しやすい硫黄や硝酸ナトリウムが含まれているのだ。有害な過酸化水素岩石も分布している。
防護スーツ全体が発火寸前になった。
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