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帆船に乗っている者たちは、激しい地区予選を勝ち抜いてきた強敵ばかりである。容姿端麗だが、その内側は禁欲的な猛者たちだ。
乗船している候補者は全部で12名。6名が入賞し、6名は名誉から遠ざかる。
第6位、5位、4位と発表される度に、突き上げるような大歓声が船底を震わせた。
ミルクティの名前は、まだ、呼ばれない。
あたしより優れていそうな人がまだ残ってるから。その人で上位は決まりかな。ハズレの6人組かあ。
大歓声が遠くで聞こえる・・・
「最優秀賞第1位、ミス火星を発表します。
エントリーナンバー EA-96-024。ミス・ミルクティ!」
* * *
入賞した少女たちは、帆船のステージから次々と跳躍した。
色とりどりの衣装をまとった彼女たちは、ワルキューレに合わせて、舞い降りていく。
突然、ミルクティを喜びとは裏腹に不安が襲った。
これから華やかな道のりが待っているはずなのに、奈落の底へ沈む感覚だった。
2
辺境星域惑星チョウカイⅡ。
星間連絡船宇宙港、入管ゲート。
幹線航路のターミナルシティのような賑やかさはない。ゲートから外部へ繋がる連絡用コンコースも閑散としていた。
旅行客やビジネス客の姿はなかった。
ミルクティの頬は痩せ衰えて老婆のようだった。眼窩には深い疲労の色がみえた。
かつて、彼女の長い髪は淡い金色に輝いていた。光線の角度により、金色の髪は、朝食のホットミルクティのようにきらめいた。
幼少時につけられたニックネームが、ミルクティ。
彼女はそれが気にいっている。だから、本当の名前、登録認証番号は滅多に使用しない。
もう忘れてしまっている。
ミス火星も大昔の話だ。
彼女は、確実に約束された超富裕層のコースを望まなかった。莫大な賞金は、一般の人々が呆れるような使い方をされた。
ミス火星、の乱。
主催者、資金提供者、熱烈な支持者層、市民。彼らへの背徳行為として、ミルクティは糾弾された。
彼女の心の奥には闇があったのだ。闇の根源が明らかにならない限り、彼女は背徳行為を続けるつもりだった。
それは、辺境星域にある囚人への援助だった。
辺境星域の惑星は、極悪非道の罪人の最後の場所である。再び、生還しては戻れない死刑執行と同じ意味を持つ。
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