第七章 儚く不確かな日々は、眩く

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2 「ーーた」 なんだろう。好きって。 私が思う好きと、何が違うんだろう。 「おい、芥」 気がつくと伊東の顔が目の前にあって、芥は驚いて声も出せなかった。 「ーーっ!」 「なんでそんな驚いてんだよ。休憩終わりだ」 「す、すみません……」 稽古中にまでこんなことを考えてしまうなんて、たるんでる証拠だ。気を引き締めなければと、芥は気持ちを切り替える。 伊東はそんな芥を見て何か言いたそうだったが、言い淀んでやめた。 聞いてもたぶん、話さないだろう。けれど、昨日お駒と会った後からわかりやすくぼーっとしていて、竹刀を合わせているとき以外はどこか上の空だ。 お駒に何を吹き込まれたのか知らないが、稽古中は集中してもらわないと困る。
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