第1章

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「ここ、一緒に行ってみないか?」 心臓が口から飛び出すのをなんとか飲み込んで、雑誌を見せながらさり気なく聞いた。 食べ歩きが好き。高価なものじゃなくていいの。グルメじゃないもの。ただ、いろんな美味しいものを食べるのが好きなのよ。 彼女が話していたのをしっかりインプットしていた。 グルメじゃない。 これはなかなかハードルが高い。 美味しいものは個人の好みがあるだろう。 グルメじゃないなら、グルメ雑誌も頼りにならない。 街で噂と紹介されている所は、すでに行っていると思うし。 なんたって食べ歩きが趣味なんだから。 彼女と同じ部署になって3年が過ぎた。 先週、部長から転勤の打診があった。 来春には彼女と離れてしまう。 もう呑気にしてはいられない。 何も言えずに後悔するのだけは嫌だ。
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