第一話 『導かれた出会い』

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これは、一人の人間が幻想郷に迷い込んで間もない頃の話である。 「…というわけで天城神威、あなたに依頼します。引き受けてくれるかしら?」 扇子で口元を隠し、微笑みながらそう言うのは八雲紫。 ここ『幻想郷』の創設者の一人で、強力な力を持った大妖怪だ。 俺は目の前に置かれた札束を目にし、紫を訝しげに見つめながら言う。 「…おいおい。あんたが俺に依頼たぁ、随分と珍しいことがあったもんだね。一体、どういう風の吹き回しだ?」 「あら、万屋として活動し始めたあなたに、私からのプレゼントよ?お気に召さなかったかしら?」 クスクスと笑う紫。 確かに、万屋として活動を始めた俺のところには、今のところ一件の依頼さえ無い。 だからこれは初依頼で、俺にとっちゃ門出の依頼と言ってもいいものだ。 しかし、俺は素直に喜ぶことが出来なかった。 「…ああ、お気に召さないね。あんたがプレゼントたぁ、縁起でもない」 「あらあら、酷い言われようね」 「そりゃそうだ…あんた、一体何を企んでいる?」 「あのね、人を何だと思っているの?」 「いや、あんた妖怪だろうに…」 「そういえばそうだったわね…」 そう言いながらも、未だに笑っている紫。 こいつの行動には、いつも裏があって当たり前だ。警戒するのは当然。 そんな俺の意図を読み取ったのか、紫の傍に立っていた女性が口を開いた。 「安心しろ、神威。紫様は、何もお前に危険な目に遭わせたくて依頼したわけじゃない」 八雲藍。 紫が従える式で、正体は『九尾の狐』という最強の妖獣らしい。 主の紫とは反し、実に穏やかで礼儀正しく、ただの人間である俺にも優しく接してくれる数少ない人物だ。
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