第一話 『導かれた出会い』

4/9

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ここは・・・」 紫のスキマにより移動した俺の目に移ったのは、何処までも広がっている美しい向日葵畑だった。 その向日葵は俺の背丈以上に伸びており、ここまで育てるのは大変だったろうと素人の俺にも理解出来てしまう。 っと、そうだった・・・さっさと依頼を済ませないとな。 俺が一歩踏み出そうとした、その時だった。 「あら、たかが人間風情が私の向日葵畑に何の用かしら?」 「・・・っ!?」 不意に背後から声が聞こえ、俺は即座に振り向く。 そこには、日傘をクルクルと回しながら差している一人の女性の姿があった。 肩まで伸びた綺麗な緑の髪に、吸い込まれそうなほど紅く透き通った瞳。 だが、俺はすぐに分かった。 その美しい姿からは到底予想もつかないほど、凄まじい殺気が彼女から漂っていたことに・・・。 こりゃ、長居はいかんな・・・。 「あー・・・ここって、もしかしておたくの畑かい?」 「人間が私の畑に足を踏み入れるなんて、いい度胸ね。そんなに死にたいのなら、今すぐ殺してあげるわ」 いきなりの死刑宣告。 確かに勝手に畑に入った俺が悪いが、人の話は最後まで聞くべきである。 ・・・いや、聞いてなかったか。 とにかく、この畑が目の前の彼女のものなら、俺の話を聞いてもらわなければ困る。 「まあまあ、とりあえず落ち着いて俺の話を聞いてくれないか?そんなに殺気立てちゃあ、せっかくの美人が勿体ないぜ?」 「誰がいつ、あなた風情に発言する許可を与えたのかしら?」 「おおう、許可が必要だったのかい?」 「ええ、ここは私の畑よ。私の許可が必要なのは、至極当然でしょう?」 どこの女王様だ・・・。 とりつく島もないとは、まさにこのことかもしれない。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加