第一話 『導かれた出会い』

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「まあ、いいか・・・とにかく、俺の話を・・・」 「それなら、少しだけ本気を出してあげるわ。それも、遺体が微塵も残らないほどに」 「・・・聞いてくれるわけないよなぁ」 今度は、日傘に弾幕が集中して集まった。 ・・・何をするつもりだ? 良く見ると、光が収束しているようだ。 「おいおい・・・冗談キツいっての」 「さようなら、人間」 そして、俺の視界には光しか見えなかった。 「ふぅ・・・まったく、あの人間のせいで畑が滅茶苦茶だわ。また手入れしなきゃならないわね」 「おいおい、そいつぁ俺のせいか?」 「っ!?」 彼女は、再び赤い瞳が驚愕に開かれた。 無理もない、やはり俺はまた無傷で生きているのだから・・・。 俺の能力を知らないうちは、どうやっても俺を倒すことなんて出来やしない。 それが分かったのか、彼女は日傘を再び開いて差してから溜め息を吐く。 「はぁ・・・どうやら、あなたに幾ら攻撃をしかけても無駄なようね。・・・死ねばいいのに」 どうやら、彼女はようやく諦めたようだ。 ・・・なんか最後、呪いにも似た言葉を吐かれたが・・・まあ、いいか。 「俺の話を聞いてくれるか?」 「無理ね。私は今から、畑を直さなくちゃいけないもの」 ふむ、確かに周りは滅茶苦茶のようだ。 まあ、全部彼女自身の攻撃のせいだが・・・。 しかしまあ、彼女の大切な畑に無断で足を踏み入れた俺にも責任はある。 あ、いや、紫のせいか・・・。 「分かった、なら俺が直そう。せめてもの詫びだ」 「・・・あなた如きが?」 訝しげに睨んでくる緑髪の女性。 確かに俺は農業に関しては素人だが、俺にはこの能力がある。 「まあ、少しだけ待ってくれ。時間が必要だ」 「・・・分かったわ。なら、私は家に戻る。直したら教えてちょうだい。ただし、逃げたら今度は本気で殺すわ」 そう言うと、彼女は日傘を差したまま去って行く。 なんとも怖い女性だったが、今はこの畑を直すことに専念しよう。 ・・・こいつぁ、俺の能力でも相当時間を要するな。
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