第一話 『導かれた出会い』

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さて、俺は彼女の家に上がらせてもらい、ようやく話し合いの場を設けることに成功した。 だが、問題が一つあった。それは・・・ 「じゃあ、話を聞かせてもらおうかしら?ただし、下らない内容だったら殺すわよ?」 「えっと、その前に一ついいかい?」 「何?命乞いなら聞いてあげないわ」 「そうじゃなく・・・何故、俺は正座で床に座らされているんだ?」 そう、俺は正座を強要されていた。 彼女は立派な木製の椅子に腰をかけている一方で、俺は何故か床に正座状態。 「椅子が一つしかないからよ」 「立って話してもいいか?」 「私を見下しながら話すというのかしら?」 ギロッと鋭く睨まれてしまった。 どうにも、彼女は女王様気質らしい。 いや、単なるドSか? 「分かった、このままでいい」 「賢明な判断ね。それで、話というのは?」 俺は諦め、紫から承った依頼の内容を聞かせることにした。 「ああ。おたく、色んな種類の花を扱っているんだろう?」 「まあ、一応は育てているわ」 よし、なら話は早い。 「ある人からの依頼でな、ある花を少し分けて欲しいんだ。もちろん、礼はする」 「依頼?」 「ああ、申し遅れたな。俺は万屋をやっている者だ。よろしく頼む」 「ふぅん・・・万屋ね」 「それで、どうだろう?」 「断るわ」 間髪入れずに即答だった。 びしゃりと言い放たれたことに落胆しつつ、俺はそれでもめげずに食い下がる。 「そこを何とか頼めないか?この依頼を達成しないと、俺ぁ酷い目に合うんだ」 「あら、それは面白そうね。だったら尚更、断るわ。酷い目に合いなさいな」 ぐうの音も出ない。 とりつく島もないとは、まさにこのことだろうか?
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