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さてはて、どうしたもんかと悩んでいると、彼女は小さく溜め息を吐いた。
「ふぅ・・・まあ、いいわ。花畑を元通りにしてくれた恩もあるし、特別に要望に応えてあげる」
「いいのかい・・・?」
「ええ、ただし・・あなた、万屋と言ったわね?それは何でもするということかしら?」
「いいや、面倒なことは引き受けないし、無賃で働くつもりもない」
きっぱりとそう言うと、彼女はぽかんとした後、意外にも「ふふっ・・・」と小さく笑った。
なんだ、こんな可愛い笑顔も出来るんじゃないか。
「おいおい、笑うこたぁないだろ?」
「あら、気に障ったかしら?でも、あなたみたいな面白い人間がいたなんて、可笑しくてね。そういう正直な人間、結構好きよ」
なんだか知らんが、気に入られたようだ。
「花を譲る代わりに、私から一つ依頼があるのだけれどいいかしら?」
「・・・先も言ったが、面倒事は断るぞ?」
「大丈夫よ、あなたなら楽な仕事だわ。それを達成したら、報酬としてお金と花をあげる。どうかしら?」
初の仕事で、二つも依頼が入ってくるのは実に有り難いことだ。
それで信頼も得るのなら、一石二鳥だ。
ならば、もはや迷う必要はない。
「いいぜ、やってやるよ。それで、その内容は?」
「人里に行って、食料を買ってきてほしいのよ」
「は・・・?」
聞いた瞬間、今度はこっちが呆気に取られてしまった。
どんな依頼が来るのかと思えば、そんなこと?
「そ、それだけかい?」
「ええ、それだけよ。買いに行かなきゃと思ってたんだけれど、面倒くさくてね」
そいつぁ、単なるパシりじゃないか?
そう思ったが、口には出さない。
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