第十七章 消せない呪縛

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「…………だから苦手なんだって、こういうの」  ぼそりとつぶやく長塚。それは誰かに告げるためというより完全な独り言のようだったが、聞き逃さなかった篠崎が、嬉々として長塚のもとへ行く。 「でもすごかったじゃないですか。隊長みたいでした」 「いや、隊長なんだって。一応」 「一応ってなんですか、一応って」  弱気な発言をする長塚の元へ、八木沢も歩み寄る。 「しっかりしてくださいよ」 「わかってるけど」 「それで、これからどうするんですか」  言いながら、八木沢はちらりと視線を横へ向ける。長塚も、その八木沢の視線をだどる。その先には直属部隊がいた。 …………久保隊長は、いないのか…………  少し前から様子を見ていたが、隊長である久保の姿はなかった。正直、ほとんど直属部隊とは面識がなく、久保と挨拶をかわした程度だ。直属部隊を使っていいと倉橋から許可を得たものの、自分が直接指示するよりも、作戦を指揮官に伝え、直属部隊を動かしてもらった方が話が早い。けれど、いったい誰が指揮官なのか。
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