第一章

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“街を離れることにしたのは、母さんが倒れたと連絡が入ったからなんだ。君には話したことはなかったかもしれないけど、もうずっと、母さんの体調が良くなくてね。実家に戻るべきか迷ってたんだ。父さんがまだ元気なうちに一緒に暮らしたかったから。仕事もだけど、こっちを離れがたかったのは君がいたからなんだ。別れても、まだ君のいるこの場所から離れるのは嫌だった。会社でたまに君のフロアの方を用事で通ったときなんかに、元気がなさそうな姿を見掛けていて、やっぱり気になっていました。 君に告白をしたレストランを覚えてるかな。本当は今年も予約していたんだ。未練がましくて、嫌われてしまうかもしれないね。もし、もう一度やり直せるなら。そう願うけれど、もう後の祭りだ。君の直向きさも笑顔も、少し我がままなところも、全部が好きでした。そんな君を支えられず手放したことを、ずっと後悔したけど、そろそろ進まないといけないね。色々身勝手なことばかり言って、本当に申し訳なかった。 今はただ、君が笑っていてくれることだけを願います。” 最後まで読み切ると、涙が止まらなかった。ずっと後悔していたのは、私だけではなかったのだと思い知る。手紙が届いてから、もう三か月が経っていた。
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