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あれから、私は変わらず日常を過ごしていた。いや、少しだけ変化はあった。 「今日定時で上がれそう?」 終業時刻間近にデスクで仕事をしていると、秀美がやってきた。 「うん、今日はもう終わるよ」 「軽く飲んで帰らない?」 「…うん、いいね」 少し戸惑いながら、私はそう返事をした。 あれから少しずつではあるが、職場に馴染めるようになってきた。ずっとこちらを気にかけてくれていた秀美が、間を繋ぐように私の居場所を作ってくれていたからなのだろう。この同僚には感謝しないといけない。ずっと塞ぎこんでいた私に、それでもずっと声を掛け続けてくれたのだから。 「遥さ、珍しく有休なんて取って何するの?」 来週、私は少しくらいは使えと言われていた有休をやっと取っていた。 「うん、ちょっと東京に人に会いに行こうと思ってるの」 「なに、友達?」 「ううん、前に会社でお世話になった人」 そうすんなり答えて話題を逸らした。 彼との思い出をひとつひとつ振り返るように、今日までの日々を過ごしてきた。あの日にはもう、こうすることを決めていたのかもしれないと不意に思う。 彼と付き合い出したのは、冬の香りが空気に入り混じる秋も終わりの時期だった。彼と別れて二度目の秋。彼からの手紙が来てから一年後のことだった。
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