第1章

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初めて言われた「おめでとう」の一言。 その相手は今まで自分の全てを否定してきた親父だった。 進学や就職、自分が進みたい目指したい道を自分の中の正論と罵声だけで否定して自分の意見だけを押し付けるのが俺の親父だった。 いつもの口癖は「俺の言う通りにやれ」「才能がない奴は俺の言う事だけを聞いていろ」の完全に上から目線の言葉だ。 母親も父親に似た性格で、二人と同じ家で同じ環境で一緒に暮らすのは苦痛の日々だった。 それでもうつ病にならなかったのは、ある人のおかげだ。 どんな時でも自分の愚痴を聞いてくれる先生がいたから。 その先生は高校3年間ずっと担任だった男性教師。 担当は保健体育で、休みの日には近所に住む人とラグビーをする体育会系の人だ。 俺が悩みや愚痴を言う時には、毎度同じことを言う。 「絶対に自分を責めるな。おまえは絶対に報われる」 若干熱血教師のような先生だったが、高校を卒業してからも仕事の合間に電話で俺の愚痴や悩みを聞いてくれた優しい先生だ。 今まで出会った人の中で1番優しい人かもしれない。 高校卒業後は大学に進学、四年間の学習を終えたのち、社会人になった。 社会人になる前にめんどくさい就活があったが、ほとんど両親からの強引な勧めで名のある企業に就職。 30歳を超える頃までは、仕事に没頭したが、それには理由があって、もし勝手に会社を辞めたら罵声や文句を浴びせられて遂に自殺してしまう自分の姿が頭に浮かんだからだ。 それでも俺に転機が訪れた。 まず仕事での成果を部長に認められて昇格、取引き先で知り合った清楚な感じの女性と結婚。 結婚したおかげで、親元を離れることができたことが1番の幸せで喜びだったが、ある日、夢の中に親父が出てきた。 最後に見たときより痩せていて、顔色は少し悪いように見えたが、声だけはいつもと変わらなかった。
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