3 向

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 そんなことを考えていると展望台の下。  見上げた左手側の先が展望台だとわかったのは開けた先に広がる風景が同じだったから。  初回より薄いが、富士が望める。  そのまま道を進むと緩い下り坂。  土に苔が生え、滑り易い。  だから気を張る。  その場所を抜けると左手先にフェンスが見える。  が、メインストリートはまだ続くようなので単なる分岐道と考え、一旦無視。  けれども、進むとメインストリートが行き止まる。  柵と金網で仕切られたその先はおそらくゴルフ場に続くのだろう。  だから引き返し、フェンスの道を試みる。  フェンスそのものは長く続かず、右手側に畑が現れる。  フェンスで覆われた部分も何らかの栽培地らしいが、知識のないぼくにはわからない。  畑の先が造成地。  整地されているが、家が建つのは先の話に思える。  仮称『フェンスの道』は里山の外周道といったところ。  だからメインストリートの一本だ。  畑や造成地ができる以前、里山はもっと大きな丘陵で、種々の獣もいただろう  ……と思っていると、鋭いピーッという鳴き声が聞こえる。  見上げると、どうやら鷹らしい。  かつて里山付近が狩場だったかどうか知らないが、自然が残れば、都会でも鷹が暮らせるのだ。  小振りの鷹は数度鋭く鳴きながら林の向こうへ去っていく。  すると今度は前方でガサガサと音がする。  まさか、と思うが熊が出たらヤバイ。  ……と焦るが、現れたのは人。  ぼくと同じ散歩者らしい。  互いに目礼し、擦れ違う。  その頃にはもう道幅がかなり広くなっている。  小型車ならば通れる幅。  そういえば、これまでに通った道の数か所に轍が残っていたことを思い出す。  見たときは気に留めなかったが、資材は車で運ぶのだろう。  後に妖精=白い衣装の人(布)を見かける場所の右手側に掘っ建て小屋がある。  農作業者の小屋だろう。  左手側は良く見れば丘への昇り道だとわかる。  雑木の生え具合も周囲と比べ、多少疎ら。  が、その日は昇らず、遣り過ごす。  妖精がいないのだから当然のこと。
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