2 由

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 話が跳んだが、散歩をする場所(経路)に突然飽くことがある。  慣れた同じ道を何も考えることなく歩くのは愉しいが、不意に飽いてしまうのだ。  そうなれば新しい散歩場所(経路)を探さなければならない。  ぼくは大抵地図に頼る。  今度の場合は実家から電車で数十分の距離にある大きな緑を探したのだ。  幾つも見つかるが、その中には当然自分の知る場所が多くある。  二十四年も住んでいる地区でのことだから当たり前。  けれども知らない場所もある。  理由は簡単で日頃電車で向かわない位置にあったのだ。  だから向かうには電車の乗り換えが必要になる。  その路線はぼくの知らないものではないが、乗った回数が生涯で数えるほど。  ぼくが会社で営業職に就いていたなら、あるいは近くに出向くことがあったかもしれない。  けれども、ぼくは開発部員。  出張やセミナーには出かけるが、基本内勤者だから、出向く範囲が限られる。  話を戻すが、地図に見つけた知らない緑の中から、ぼくは比較的大きく、また家から近い場所を選ぶ。  造成地(非緑)とゴルフ場(緑)が隣接した一区画。  それで散歩に出かける先は決まったが、その週末は久し振りに高校時代の友人と遊ぶことになる。  だから実際に里山に出かけたのは翌週末。  最寄駅で降り、少し迷うが、明らかに緑が連なっていたので、そちらに向かう。  通い慣れてからは里山への入山法(?)が三つあるとわかるが、あのときはひたすら入山道を探す。  程無くそれを発見する。  まさかの猫たちに導かれ……。  飼い猫が数匹屯している日陰に向かうと、その先が登り口。  特に看板もないので、猫がいなければ通り過ぎたかもしれない。  ぼくは歩くことには慣れている方だが、普段は平坦なところが多いので、僅か数分の里山の勾配に息が上がる。  それで休み々々昇るうち、身体が慣れる。  が、慣れた頃にはもうメインストリートの勾配が緩い。  だから景色を眺める余裕も生まれる。  ぼくが最初に目にした里山内の景色は畑。  見た限り二区画あり、その片面(右手側)に杉林がある。  隣接する数か所に丸太が纏め置かれていたので伐採用だろう。  ……という認識はあったが、さて、どう進めば良いか。
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