2 由

4/4

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
 初めての場所なので何一つわからない。  道が何処に抜けるか見当がつかない。  知らない道を歩く醍醐味は迷うところにあるが、小さくても山だから不安が募る。  遭難したらどうしようか、と気の小さいことを考える。  が、考えても仕方がない。  自分を鼓舞し、進み先を決める。  ぼくは分岐点にいたわけだ。  今ではそこが白い衣装の人に追い払われ、抜けた先の近くとわかるが、当時はそれを知る由もない。  とにかく里山に入った道をそのまま進む。  ……と行き止まる。  それで方向を変えたかというと、そうはせず、畑を横断(縦断)。  最初に気づいた畑の向こうに見えた二番目の畑の先を目指す。  乾いた土で靴が汚れるが仕方がない。  勾配は急だが、土と雑草の坂を昇り、次の雑草の坂に至る。  それを経由し、二番目の畑の先に抜ける。  抜ければ、そこは広場。  狭いが、先に展望台がある。  展望台の近くには丸太椅子。  不揃いな数脚がそれぞれの方向に傾き、不愛想に客を待つ。  木々の向こう、開けた先の下に学校があり、遥か遠くに富士が見える。  方向から考え、丹沢山系がその手前。  展望台があるということは、その近辺にメインストリートが走るということ。  展望台がドン詰まりでなければ、当然道が二手に分かれる。  眼下の学校の右方向に電車の線路が見えたので、進む先をそちらに決める。  歩き始めて百歩ほどで空の割合が少なくなる。  更に進めば林の中。  左右の雑木林に阻まれ、前後の視界も閉ざされる。  小さくても山道なのでくねくねとうねり、場所によっては前後数メートルしか見通せない。  木々に阻まれ、頭上が暗い。  方向感覚も失われる。  いずれ何処かに抜けるとわかっていても慣れない道だから不安になる。  辿りついた先が駅から遠いと厭だな、と更に心配。  それから数十分間は不安の嵐。  曲がりくねる暗い下り道がぼくの心を代弁するかのようだ。  やがて木々の連なりが終わり、視界が開けたときには、ホッ、と溜息。  右手側一面が広い畑で、その向こうに家が建ち並ぶ景色。  ……ということは駅もあるのだろうと考え、再度ぼくが安堵する。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加