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私を敵視しているのは美桜さんだけじゃないのだ。
二人の女性に牙を向かれた現実に、私はすでに耐えられそうにないほど心が弱っていた。
「葉瑠!」
我に返ったとき、彼が何度も私を呼んでいたことに気づく。
「大丈夫?
ごめんな、遅くなって」
見上げた先には、心配そうな目をした彼が立っていた。
私服姿の彼に、バイトが終わったことを悟る。
「帰ろう」
彼はそう言うと、いつものように手を差し伸べた。
その手の温もりを確かめるように優しく触れると、彼は小さく微笑んだ。
この笑顔に何度も救われてきた。
彼のマンションに帰るのも、彼が今、笑顔を向けてくれる相手も全部私だ。
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