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「でも……」
「葉瑠は心配し過ぎだよ。
俺は何があっても葉瑠だけだから。な?」
彼はそう言うと、大きな手のひらで私の頭をそっと撫でた。
彼は私を安心させたかったのだろう。
だけど、私の心は灰色に染まっていく一方で、不安は消えるどころか、増えていく。
このまま彼と話しても空回りしそうだ。
面倒くさい女だと思われるのが嫌で、静かに頷いた。
彼が研究を終えるまでもう少しだ。
そしたらまた、元の生活に戻れる。
きっと、この不安もいつか真っ白になって消えていく。
そう信じて、私は不安な気持ちを無理やりコクンと飲み込んだ。
それまで、私が我慢すればいい。
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