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それから先は覚えていない。
気がついたら、私は自宅へと帰り着いていた。
どこをどうやって帰ってきたのかも思い出せず、なんとか部屋まで入ると、そのまま倒れるように膝を突いた。
その衝動でバックから携帯が滑り落ちて、非通知を知らせる着信音が鳴り響いた。
私はそっと携帯を手に取ると、そのまま電源を切った。
どれくらいそうしていただろうか。
遮光カーテンからみえた夕暮れがかかったオレンジ色が部屋を照らしている。
…いつの間に、こんなに時間が経ってたんだろう…。
私、どうやって帰ったんだっけ…。
どうやって…ここに…。
涙が出ないのは、現実味が沸かないから?
彼の口で、彼の言葉で、直接話を聞いていないから?
それとも、彼を信じると決めたものの美桜さんが彼の家にいて…二人が親密な関係だと心のどこかで疑っているから?
あまりの喪失感のせいなのか、自分でもよくわからない。
ただ呆然と、泣くこともできないまま目の前の床を眺め続けた。
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