10.傷。

18/19
489人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
鮮明に蘇る、彼と過ごした記憶。 『どんなことがあっても、俺は葉瑠だけだから』 嘘つき。 『葉瑠…好きだよ…』 …嘘つきっ! 雨の音が勢いを増す。 身体起こそうと足を着いてみるも、ふらついて立つことができず、そのまま濡れた地面へしゃがみこんだ。 今日のためにめかし込んだワンピースは雨に濡れてめちゃくちゃだった。 「…うっ…うぅ…」 きっと、もう二度と彼に会うことも、触れることもない。 優しくて、大好きなあの笑顔も、 私を愛しそうに見つめる瞳も、 もう見ることはできない。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!