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子供の頃は、宙が俺を呼ぶ声だけで、何を求めているのか、何を思っているのかが直感で分かった。
ある時は、お腹がすいた。
ある時は、体調が優れない。
ある時は、構ってほしい。
それはつい最近、中学までも続いていた。周りから「夫婦か」とからかわれていたのも、良い思い出となって俺の記憶に仕舞ってある。
なのに。
「これからどうすんだよ」
こんな言葉を口にするなんて、思ってもみなかった。俺の発した声は、しんとした空き教室に染み渡っていく。
ここには、宙と俺しかいない。
「どうもしない」
俺を笑って見ていた視線を外し、どこか遠くを見て、そう言った。今にも泣き出しそうな、辛く、苦しそうでいて、どこか幸福に包まれているような。
その顔は、少し遠い記憶に見覚えがあった。
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