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あんな、媚びる女は苦手だ。
男作って逃げた母さんを思い出す
兄貴も、俺と父さんを置いて出ていきやがって…
毎月、仕送りだけって ふざけんなよ。
どんな思いで父さんと暮らしてきたか分からねぇだろうな
好き勝手やりやがって
くそっ
煮え切らない想いを抱えながらマンションへ戻る
すると、偶然 里子…いや、里ちゃんとバッタリ会った
笑顔で手を振る里ちゃん
俺も、いつものように笑顔で手を振る
一緒に部屋に戻り、夕飯の支度をする
……今日はオムライスか……
「修ちゃん、お皿取って?」
「うん」
食器棚から花柄の 丸いお皿を取り出した
「ありがとう」
他愛もない会話
…… 何だ?この気持ち…
懐かしいような、切ないような
もうすぐで高校生上がりの女に何を感じてんだ俺…
「修ちゃん美味しい?」
「うん。美味しいよ」
「でも、修ちゃんが作るオムライスの方が美味しいよね、、」
何で、いちいち落ち込むんだよ
これでも十分、美味いだろ
いちいち、反応に返さなきゃなんねぇの面倒臭いな…
こういうキャラで通してるから仕方ないけど
「修ちゃん、オムライスのケチャップ 口の端に、ついてる」
里ちゃんの、スッと伸びた手が俺の肌に触れる
「ほら。取れた」
俺の口から拭い取ったケチャップをペロッと舐める。
何なんだ……
ケチャップを取ってもらっただけなのに、俺の胸は うるさいくらいドクドクいってる
ちょっと待て
俺が里ちゃんと付き合ったのは兄貴の好きなものを横取りするため
その対象が、里ちゃんだったってだけ
兄貴の復讐に飽きたら、捨てるだけのことだったのに……
つい、この前まで 別に里ちゃんの事は何とも思ってなかったはずだ。
いや、今も変わらないはず
じゃあ、この気持ちは何なんだよ。
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