永年おは郎

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 むかーしむかし、ある村にどういうわけか生まれてから一度も眠ったことがない子供がおった。  子供の名は“おは郎”。おは郎は朝も昼も夜も一睡もせず、常に起き続ける生活を送っていた。  おは郎の父と母はそんなおは郎を病気ではないかと疑ったが、おは郎は両親の心配をよそにスクスクと元気に育った。片時も目が離せないほどのやんちゃ坊主だったので、おは郎を一人にして眠るわけにいかないと、父が朝と昼、母が夕方と夜と、交代で起きる生活を送るしかなかった。  当然、仕事や家事や育児を一人でこなさなくてはならず、父と母はいつもへとへとになって眠りについた。そんな父と母を見て、おは郎は何気なしに呟いた。 「おとうもおかあも、いつも気持ちよさそうに眠っててええなあ。オラも一度でええからぐっすり眠ってみてえだ」  おは郎の言葉に父と母はおは郎を何とか眠らせようと薬を煎じて飲ませたり、子守唄を唄ったりと色々試したが、結局おは郎が眠りに落ちることはなかった。
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