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茶柱が立っていた。
僕の目先、ほんの数十センチのところで今、その奇跡は起きていた。
そこには茶柱が二本、立っていた。
思わず頬を緩め、左手に持っていた急須の口を上げた。上げたのだが、急須の注ぎ口に留まっていた水滴は衝撃に耐えきれず、二本の茶柱の間へと吸い込まれるように落下していった。
波紋が音と共にふわりと広がって、僕はその行く末を見届けようと顔を近づけた。
僕が、そこにいた。
僕のよく知る、僕自身がそこに映り込んでいた。
たった一滴の衝撃で茶柱が倒れることなどありはしないと知っているのに、心底安堵した僕がそこにいた。二本の茶柱は今も、水面でピンと背筋を伸ばしている。
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