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「贄…だと?」
聞きなれない言葉に思わず聞き返す
「はい、聞いた事はありませんか?人喰大蛇の伝説」
「話くらいはな…実在するなんてのは、はじめて聞いたがな」
『人喰大蛇の伝説』
とある童話作家が纏めた童話集『百物語』の一説にある、人喰い大蛇の物語
内容は童話らしく子供向きに書かれており、悪い事をしたら大蛇さんに連れていかれるよ、といった子供を叱る為の有名な文句になっている
「その大蛇は十年に一度、住処にしている山から降りてきて、力のある少女を贄として山に連れていくんです、そして今回は」
「お前さん、というわけか」
「はい」
「なんで俺なんだ」
「別に貴方でなければいけない、というわけではありません」
「なら何故引き留める、そんな話までして、同情がほしいのか?」
「いえ、これはお願いではないのです」
「どういう事だ?」
「ところで、体の調子はどうです?」
「話をそらすな…ん?」
そこまで問題はないのだが、背中を刺されていたし丸太で殴られていた、それなのに体の調子が良すぎる、怪我もなくなっている
「ごめんなさい、これはお願いではなく、事後承諾なんですよ」
申し訳なさそうにこちらを見ながら謝っている
「死にかけていた貴方を見つけ、治療が間に合わないと判断し式神にして、人ではない体にして連れてきました」
「ん?もしかして気が付いてない?」
「何にですか?」
「俺、人間じゃないぞ?」
「は?」
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